かわらばん

かわらばん

    
かわらばん地域版55号 2018年5月

大島機工株式会社
   ハイレベルなQCDを目指して
 金属製品製造業を営む大島機工株式会社の山口伸治社長を田名の本社工場に訪ねました。

 同社は1973年(昭和48年)5月に小松部品株式会社の協力工場として、主に建設機械油圧シリンダ部品の製造を行うことを目的に前社長である山口晃氏によって設立され、本年で創立45周年を迎える。

 法人設立から3年目の1976年に「NC旋盤1号機」を導入、続く1977年には「マシニングセンタ1号機」を導入するなど設備導入を着実に進めてきた。1978年には自動車部品 車速センサ・ピニオン製造を開始すると共に、2000年にはコンピュータによる生産管理システムを導入。厳しい時代背景のもと自動車ミッション部品、シンクロリング製造やトラック部品の製造を開始するなど事業領域の拡大を図ると共に工場並びに事務所を増設するなどの製造現場・執務環境の充実も積極的に推し進めてきた。

 大島機工株式会社が得意とする製品群は①建機・油圧シリンダ部品 ②自動車部品 ③産業機械部品及び医療機器関連部品と幅広い。売上シェアの7割を占める建機部門は、主に国内向けであるミニ型・小型・中型、主に海外向けである大型・超大型があるが、同社はミニから大型までを幅広く取り扱っている。そんな同社の特徴は、材料の自給化が可能であり、試作及び小ロットから量産品加工の一貫生産体制に至るまで柔軟に対応できることがあげられる。また、長年にわたる業歴から得られた技術力やノウハウをもとに切削時間の短縮・品質向上・生産効率化に日々取り組んでいること。そして何よりも異形の鋳物や鍛造品など極めて複雑な形状をした部品について、特殊治具を使って巧みに造り上げる技術こそが当社の最大の強みだと山口社長は言う。

 山口社長は座間市の出身で兄と弟の三人兄弟。弟さんとは双子で、小さい頃はクラスメイトも見間違えるほど“そっくり”だったそうだ。また、小学生時代からスポーツすることが好きで野球とテニスに熱中。中学以降はテニス一本に絞ることになったが、本当は野球を続けたかったらしい。高校時代は、夏休みになると兄弟そろって、父晃氏の要請により大島機工でアルバイトしたことが、今でも思い出として残っているそうだ。

 その後、国学院大学法学部に進み、卒業後は薬品会社に就職、医療機器販売部門で約3年間勤務した。その時の上司から社会人としてのマナーや営業の極意など多くのことを学ぶ。厳しくも愛情を持って育ててくれた恩師だと山口社長は振り返る。その頃、ご両親がほぼ同時に病に倒れるという予期せぬことが起こり、伸治氏が急遽事業承継することになった。約1年間にわたり小松ゼノアで厳しい修行を積んだのち大島機工に入社。

 そんな山口社長が代表取締役に就任したのは2 0 0 3年4月、2 0 0 5 年にはI S O 9 0 0 1:2 0 0 0 認証取得( 品質)すると共にC A DC AMの導入、20 0 6年には生産ラインを改善し、生産性向上を目的とした「経営革新計画」が神奈川県知事の承認を受ける。その翌年である20 07年には待望の新工場が完成(現在の本社工場)、20 0 9 年にはエコステージ1を取得するなど、同社の企業力アップに向けた活動は休むことなく続けられた。

 2014年には多品種小ロット対応設備をはじめ「5軸複合加工機」を導入すると共に2 016年には横型マシニングセンタを導入し、ハイレベルな品質管理は勿論のこと取扱製品の多様化など、さらなる企業価値の向上に積極的に取り組んでいる。

 2 01 8 年1月には、「平成2 9年度:神奈川県優良工場表彰」を受賞。同賞は優れた製造技術と品質管理等に基づいた経営実績や作業環境・生産技術が特に優れていること。また人材育成、新規事業展開と労働時間の短縮、環境関連手続きの遵守に取り組んでいると共に地域貢献活動などを評価するものであり、同社の地道な努力が高く評価された証だろう。

 ちなみに、山口社長は商工会議所をはじめ様々な団体に積極的に参画している。特に工業系若手経営者が自己啓発と自らが真の経営者に成るための会として発足した「青年工業経営者研究会」(略称:青工研)に所属して学んだことが今の経営に役立っているという。また、2 010 年には第9 期生として「SI C 経営塾」を受講、自社の事業構想を約1年かけて考えられたことは非常に有意義だった。できれば経営塾講師である寺本講師の明るく的確な講義を再受講し、改めて事業構想を考えてみたいと山口社長。

 「これからの10年は今まで以上に早いスピードで変わっていく。また、今後も中小企業にとって人手不足は切実なる問題だ。今後10年は規模の拡大より自社の強みをさらに強化しながら、景気低迷期にも崩れない磐石な経営基盤を持つ会社にすることだ」

と山口社長は将来に向けた方針を示す。人・モノ・設備・作業方法を適切に組み合わせ、常にハイレベルな「品質・コスト・納期」(QCD)を目指し、お客様のニーズにお応えできるよう地道な経営活動に取り組んで行きたいと語る。まもなく創業5 0 年を迎える大島機工株式会社のチャレンジに終わりはない。

大島機工株式会社
代表取締役社長 山口 伸治(やまぐち しんじ)
所在地:相模原市中央区田名2242-3
従業員数:28 名  
資本金:1000 万円  売上高:3.7 億円
事業内容:金属製品製造(建設機械部品、油圧シリンダ部品、自動車部品、ガス器具部品、産業機械部品)
URL: http://www.ookk.jp/
山口社長
工場での山口社長