かわらばん

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かわらばん地域版54号 2018年3月

株式会社むつみ工業
   「誠意と感謝」の気持ち大切に特殊鋼材溶接分野で日々前進!!
 特殊鋼材溶接・溶接補修を主業とする株式会社むつみ工業の座間社長を相模原市中央区田名の本社工場に訪ねました。
 同社は、鋼材や鋼板などを加工する鍛圧機の溶接修理を専門とし、汎用機械器具製造業の各種機械・同部品製造修理業を営んでいる。鍛圧機とは、ハンマーなどの鍛造機やプレス機などの圧造機の総称で、鋼板などをたたき金属成形を行う大型機械だ。自動車のボディー形成や金属加工に欠かせない加工機械であるが、時には鋼板へ数百トンの圧力で鍛圧するため、鍛圧機には非常に大きな負荷がかかり、ラムスライドと呼ばれるハンマー部をはじめ、筐体やソーブロックと呼ばれる土台に至るまで、割れ・ヒビなどの破損が生じ、定期的なメンテナンスが欠かせない。特にラムスライド部・ソーブロック部は“特殊鋼材”で製造されているが、新品に交換してから数か月程度で破損する為、金属加工メーカーは定期的に部品の補修を行っているところが多い。また、割れや破損した特殊鋼材の大型部品は難接合素材であるため、接合には高い技術が求められる。さらに補修した部品がどれだけ長く補修後の使用に耐えられるかということがポイントとなる。同社では、これまでの経験や数々の実績から、国内でも最も技術的に優れていると判断した溶接棒を選定し採用している。言うまでもなく、補修溶接は製造溶接と異なり、必要な施工条件を整え管理することがなかなか難しく、単に溶接材料の機械的性質や成分の同一性のみに基づいた選定では必ずしも十分な信頼性・安全性を確保した溶接結果を得ることができないことが、補修溶接の大きな特徴となっている。このように高い技術力が求められる補修溶接において、むつみ工業は独自の溶接技術を駆使し、大型産業機械である鍛圧機の補修ができる全国でも数少ない企業の一社となっている。

 補修溶接に大事なことは「壊れた原因をとことん追求すること」、その分析結果を基に職人の知識や技術・ノウハウを駆使して、補修品を少しでも長持ちさせるように仕上げること。当社による溶接補修は、品質の高さを徹底的に追求し、他社に比べ1.5倍から2倍高い強度を実現しており、それが当社の最大の強みとなっているのだと座間社長は語る。

 座間社長は相模原市田名で生まれ育った根っからの相模原っ子。高校卒業後、社会に出て最初の仕事はトラックの運転手。しかしながら、元来オートバイが大好きでバイク屋さんになりたかった座間社長は、日頃からバイク部品を造ったりする中で、結局行き着くところは溶接だったとのこと。一念発起し、淵野辺の職業訓練校で溶接の知識や技術の基本を学んだ。同校卒業後は市内の大手プレス機械開発製造販売会社に入社した。当時、溶接技能オリンピックで世界チャンピオンになったことのある腕のいい親方(当時の上司)に追いつきたい一心で技術向上に励んだそうだ。そのような中、別部門への配置転換などをきっかけに同社を退社した。その後、別の溶接業者に入社、特殊鋼材溶接技術力などが認められ工場長に就任するまでに至ったが、会社方針などに疑問を感じ退社することになった。

 そんな座間社長が「むつみ工業」を創業したのは20 03年27歳の時である。父とは別の道を選択するも社名は実父が経営していた「むつみタイプ印刷」から取ったそうだ。最初のお子さんが生まれたばかりで、とにかく食べていくために“がむしゃら”に働いた。ただ、創業直後で仕事はたくさん欲しかったが、義理を欠くとして、お世話になった前勤務先の取引先からは仕事を取らないように決めていたと当時を振り返る。また、何と言っても苦しかったのはリーマンショック。会社の通帳残高が数万円しかなくなったときは、さすがにまいったそうだ。

 同社は平成2 7年度補正ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金(ものづくり補助金)では、「鍛圧機の難溶接材補修における作業効率大幅改善と技能継承の促進」を計画事業として採択された実績を有する。溶接補修分野における作業効率と品質向上は勿論のこと、職場環境の改善とともに職人が「カッコいい」と言われるようにしたい。いわゆる3K業種( きつい・汚い・危険)のイメージを一新することを含め、減少傾向にある溶接技能工の育成にも前向きに取り組んでいる。

 座間社長の座右の銘は「日進月歩」。日に日に絶えず進歩していくことを常に心の中に意識しているという。「溶接業界における環境や技術が大きく進展していく中、当社の抱える課題も多い。当社は現在、溶接の補修屋でリメイクはするがメイクはしていない。これからは雇用を創出していくことを含め、できれば“メーカー”を目指していきたい」と熱く語る。さらに将来は年配者向けのDIY(自分で作ろう)塾や子供向け工作教室なども作りたいと座間社長の夢は果てしない。

 ものづくりの「キーテクノロジー」である溶接技術、その中で特殊鋼材溶接分野の専門企業であるむつみ工業は、これからも「誠意と感謝」の気持ちを大切に日々前進していくことだろう。


株式会社むつみ工業
代表取締役 座間 洋行(ざま ひろゆき)
所在地:相模原市中央区田名4116-3
従業員数:10 名  売上高:8000 万円
事業内容:特殊鋼材溶接、溶接補修
座間社長