かわらばん

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かわらばん入居版59号 2009年3月

企業をサポートし隊!!
   シリーズ企画 企業支援の現場から・・・消費税とリース取引 3回連続
消費税とリース取引
~税理士業務と消費税~
―第3回(最終回)-

 天野税理士事務所
 税理士 天野 俊裕

 第1回目では、消費税の計算方法には2つの方法があって、設備投資の際には、この2つの方法をしっかりと使い分けることの大切さを説明しました。そして第2回目では、税制改正によって、平成20 年4 月1 日以降のリース取引までもが「設備投資」とみなされ、やはり消費税の計算方法の選択に注意しなければならないことを説明しました。今回は、こういった消費税の取扱いをめぐる税理士業界の動向についてのお話です。前回より私はある社長さんから【これだけ複雑な仕組みになると、やっぱり『先生にも責任があるんじゃないの?』なんてミスはあったりするのかな?】との質問を受けていました。

○消費税のミスが全体の50%?
 最近、テレビや新聞などで医療ミスによる損害賠償訴訟の話しをよく耳にするようになりましたが、税理士の世界もけっして例外ではありません。そのため、税理士のおよそ半数近くが、これらの訴訟に備えて税理士職業賠償責任保険に加入しています。この保険会社などの調査によると、保険事
故のうちのおよそ52%が消費税に関するものだそうです(法人税:約35%、所得税:約7%)。また、この消費税の保険事故のうち、「届出書の提出の失念(計算方法の選択ミス)」によるものが、なんと約80%にまで達しています(2004年ベース)。
 私「社長のおっしゃるとおり、『消費税は税理士泣かせ!』って部分は確かにその通りなんです。」

○リース取引の取扱いが突然柔軟に!
 平成19年度の税制改正によってリース取引の取扱いが変更になったことは前回ご説明しました。しかし最近になって(2008 年11月)、突然、国税庁から実務見解が示され、結局「リースは今までどおり(賃借料処理)でも良い」ということになりました(驚)。「会計基準に基づいた経理処理を踏まえ、経理実務の簡便性という観点から・・・」ということだそうですが、私は、数多くの専門家がこの改正に対応し遅れた(特に納税者への周知が遅れた)というのが実態であると考えています。確かに、どれだけの経営者の方が「リース取引の取扱い変更について」の説明を事前に受けられていたのかは、はなはだ疑問です。

○顧問契約書には・・・。
 最近では、税理士とクライアントとの間で契約書を交わすことはほぼ常識的なことになりました。その契約書においては、次のような特約(免責条項)が付されているのが一般的です。
 「消費税の納付及び還付を受けるについては,課税方法の選択により不利益を受けることがあるので,甲(クライアント)は建物新築,設備の購入など多額の設備投資を行うときは,事前に乙(税理士)に通知する。甲が通知しないことによる不利益は,乙はその責任を負わない。」。
 この特約の「設備投資」にリース取引が含まれるかどうかは非常に関心のあるところですが、仮に含まれないにしても、少なくとも改正が行われた時に、税理士から何らの説明も受けていないということになれば、それはそれでまた別の新たな問題(善管注意義務)が浮上してくるはずです。

 これまで3回にわたり、消費税とリース取引について説明してきました。消費税の課税方法の選択については、消費税の納付税額の大小に直接関係する重要な問題です。今回のリース取引の取扱いの変更をきっかけとして、経営者の皆様には十二分に注意していただきたいと思います。
             おわり