かわらばん

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かわらばん地域版8号 2010年8月

東京工業高等専門学校 電気工学科 准教授 伊藤 浩
   大学連携 大学研究室紹介
 私の研究室では、半導体材料を主に新素子応用へ向けたプロセス開発を理論と実験の両面から研究しています。半導体を応用する上で重要なのが同種又は異種基板上で薄膜結晶成長を行うことです。そのため、我々の研究室では結晶成長メカニズムの基礎理論から検討し、実際のプロセス装置を用いて薄膜を作製し、新しい成膜手法を評価検証しています。真空プロセス装置として電子ビーム蒸着装置とRF/DCスパッタリング装置、分析装置に原子間力顕微鏡、分光装置など、その他学内共同利用施設を利用して行っています。
 現在、半導体材料として注目しているのは、Ⅲ‐Ⅵ族化合物半導体の硫化ガリウムGaS、セレン化ガリウムGaSe、テルル化ガリウムGaTeなどです。これらの材料は結晶構造が層状の2次元構造となり、強い異方性を電気的・光学的特性に示します。そのため層状半導体、巨大異方電子物性などと言われます。また、光学遷移が直接型でありバンドギャップが可視光領域にあることから、光センサーや発光素子への応用が期待できます。今までに、ガラス基板上で基板温度300℃にて結晶化する方法を見出してきました。写真はGaS結晶のSEM像(8万倍)です。100℃以下の低温結晶化を目指し、基礎理論に基づいた装置の改良を進めてきています。現在までに有機基板(カプトンテープ)上に多結晶GaS薄膜を示す結果を得ています。さらに結晶性向上へ向け研究を推進しているところです。
 その他、産学共同の研究テーマとして、反応性スパッタリング法を用いた酸化プロセスの高速化をテーマに行っています。酸化膜のSiO2、TiO2は透明であり、それぞれの屈折率が違うことを利用し、反射防止膜など光学フィルターとして応用されています。通常の反応性スパッタリング法にバイアスを印加することによって、プラズマ分布を変化させ、より高速に酸化が促進する手法を見出してきました。
 また、近年のプリント基板の微細化に対応した銅薄膜プロセスについても産学共同で研究を行っています。本研究室では有機材料と銅金属との界面状態を、ナノ領域レベルの基礎理論に基づいて、分析・検討しているところです。
 今後も基礎技術に基づいた産学連携テーマに取り組み、半導体技術、真空プロセス技術の研究成果を通じて、社会へ貢献していきたいと考えています。

問い合わせ先
<共同研究について>
東京工業高等専門学校 総務課企画係
TEL:042-668-5116
http://www.tokyo-ct.ac.jp/
<技術相談・試験依頼などについて>
東京高専産業技術センター
E-Mail: kenkyo@tokyo-ct.ac.jp
http://xythos.tokyo-ct.ac.jp/dpt/tecno/tc.htm
伊藤 浩 准教授

GaS 結晶のSEM 像(8 万倍)