かわらばん

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かわらばん地域版17号 2012年2月

株式会社不二WPC
   WPC処理を相模原から世界へ
 大野台のSia工業団地内にある株式会社不二WPC本社工場に下平英二社長を訪ねました。Siaは大野台に古くからあったゲーマー葡萄園の跡地に整備された工業団地。不二WPCの本社工場は葡萄園のワイン工場を改造したもの。工場の片隅に置いてある木製の葡萄搾り機が往時を偲ばせる。

 同社の事業はWPC処理やDLCコーティングの受託加工。WPC処理とはWide Peening and Cleaningの略称。「微粒子ピーニング」とか「精密ショットピーニング」とも呼ばれ金属部品の表面に微粒子を高速に衝突させる表面改質技術のこと。表面の強化と表面に微小なディンプルを作ることによって摩擦摩耗特性の向上が図られることから機械部品・切削工具・金型等の強度と機能を向上させる技術として注目されている。

 下平社長は生れも学校も最初の就職も名古屋。お祖母ちゃんの代までは日本を代表する木綿絞「有松絞」を営む旧家だったそうだ。大学を卒業して名古屋市守山区にある工場設備のメンテナンス、主に工場配管のクリーニングを手掛ける日進機工株式会社に入社し、新規事業の立上げに取組む。最初の事業が太陽熱温水器。次に手掛けた事業がブラスト装置、そしてWPC処理。この技術を東海地域で絶対的な影響力のあるトヨタに売り込みをかける。そして、トヨタの切削工具の集中研磨工場へ納入することに成功し、社内でも高い評価を受けたし下平さん自身とてもやりがいを感じたという。しかし、皮肉なことにトヨタとの取引を巡るある事件を契機に退職、独立を決意する。詳しい話は聞けなかったが真直ぐな性格の下平さんの男の矜持に関わることのようだ。

 WPC処理の生みの親ともいえる株式会社不二機販の宮坂社長の協力を得て平成9年4月にWPC処理の受託加工を専門に行う会社として厚木市上依知で創業する。名古屋と同じように金型や切削工具などの工業分野を開拓していったが、顧客ゼロ、会社の知名度ゼロ、そしてWPC処理の知名度もほとんどゼロだった関東、なかなか広がっていかなかった。こんな中で見つけたのがモータースポーツの世界。レース用エンジンのWPC処理を初めて受注したのが平成9年12月。少しずつこの世界での知名度を上げ、今ではF1レースのエンジンやミッションの加工も行っている。加工の依頼は四輪、二輪、プロ、アマチアを問わず日本中からくる。そして、モータースポーツでの実績が工業分野での顧客開拓にも役立っている。自分のバイクや四輪でWPC処理を経験したメーカーの研究者からの引き合いが結構あるのだそうだ。確かな技術は思いもよらないネットワークをつくるものだ。

 下平社長の夢は日本発の技術であるWPC処理を相模原の地から世界に発信すること。相模原にくれば何か面白いこと、びっくりするようなことができる。そんな世界を作りたい。今は神奈川県産業技術センター、Siaの仲間、相模原市、SIC表面技術研究所、八戸高専などと協力して動物の人工関節の研究開発を進めている。無限の可能性を秘めたWPC処理を駆使し、相模原をそして日本を元気にしたい。そんな下平さんの想いに応え、SICも微力ながら一緒にがんばります。

株式会社不二WPC
代表取締役 下平 英二
所在地:相模原市南区大野台4-1-83(Sia神奈川工業団地内)
従業員数:13名
資本金:1000万円
売上高:1億9千万円
事業内容:WPC処理の受託加工、WPC処理装置の販売、DLCコーティングの受託加工