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かわらばん入居版86号 2011年6月
SICこぼれ話 「油井瑞樹さんとその作品」
 SIC-2のフリースペースに飾られた4枚の絵画
先日からSIC-2のフリースペースに飾られた4枚の絵画、皆さんお気付きですか。これはSIC内のソーシャルビジネス創育事業の中の「地域資源発信プロジェクト室」のスタッフでもある
油井瑞樹さんの作品です。
制作活動を行っていくかたわら地域活動にも携わりたいとの想いから、当プロジェクト室にも参加されています。これまで津久井地域の環境整備作業などを行いながら、プロジェクトの
中ではのどかな風景を数枚の絵葉書にしてもらい、地域の方々から感謝のお言葉を頂くことにもつながりました。“画家”と聞くと近寄りがたさをイメージしてしまいがちですが、穏やかで気取らないところがやわらかな画風にも表れているように感じられます。
展示されている作品の題名は「霧門」です。本人の解説からも、決して最短経路をたどってきたわけではない過去と現在とに正面から向き合い、それでも自分自身を信じて力強く歩んで
行こうとする「決意」が感じられます。これは絵画というフィ
ールドだけではなく、入居されている皆様の日々の活動にも重なり合う部分が少なからずあるのではないでしょうか。
作品 - 霧門 -
眼前に広がる風景が覆われていく。歩みを先へ進めようとするが視界が判然としなくなり、やがては足をとめる。
そこはすでに霧の門をくぐっていた。目は分厚く湿潤な白い幕に過去を映し出し、私を存在させる断片たちとの再会を果たす。しばらくすると、霧の晴れ間から木の葉、鳥のさえずりなどをとらえるとたちまち見えるものの世界へと帰る。
私は壁に掛けられた白いキャンバスを前にしたとき、霧の立ち込めたところに居るときと似たような感覚を覚えた。何も描かれていない表面に像を投影していた。その像は紛れもなく私の過去であり記憶であった。これは、作り手側の見地かもしれない。だが、もし白い表面とそれに対峙したときにすでに絵画が発生しつつあるのであれば、その場を支えている物質の役割を少し変換することで、絵画として成り立つのではないだろうか。
視野のなかでの床、壁、壁に掛けられるもの、作者の経験、観者の記憶、それらが少しの浮遊感を得て重なり合いまたは相容れないなどを繰り返し響きあう場の創出を強く願う。
【作者紹介】
油井 瑞樹 : 1978 年 福島県生まれ
2005 年 多摩美術大学大学院油絵専攻修了
2011 年3 月には東京・神宮前にて6 回目の個展を開催し、
今後も個展・グループ展を開催していく予定。
相模原市在住。
これらの作品をまだ見ていないという方は是非一度、もう見たという方はもう一度、絵の奥に潜んだメッセージも一緒に感じて頂ければ幸いです。
作者の油井瑞樹さんと作品『霧門』
SIC-2 のフリースペースに飾られた作品
津久井の青根地区を描いた絵葉書集
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