かわらばん

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     社長のコラム
かわらばん入居版99号 2012年7月

中嶋社長のつぶやき
   「最古にして最新たれ」長く続けられる経営・顧客から必要とされる経営
時代が変わり、経営者が交代を重ねても企業が活力を保ち続け、持続的に成長することは容易ではない。どうすれば企業は「永続」でき、株主や社員に報い続けられるのか。

 山梨県甲府市に、株式会社吉字屋本店と言う会社がある。1568年(永禄11)相模国北条氏から塩止めを受けた武田信玄に、宿敵越後の上杉謙信は塩を送った。有名な「敵に塩を送る」話。このとき、初代塩屋孫左ヱ門が越後から武田領内に塩を運んだ功績で、信玄公より甲斐国の通貨甲州金に刻まれた「吉」の字を屋号として贈られたのが始まり。440年以上の歴史を持つ。現在の社長は、18代目「孫左ヱ門」さん。

 塩問屋で創業した吉字屋は、江戸中期に菜種油やあんどん油の販売を開始。明治期以降も時勢を敏感にかぎ取り、相次ぎ手を打った。
 15代目は、1893年(明治26)、山梨県下で石油販売を始めた。日本初の石油特約店とされている。
 吉字屋は、塩、灯油、石油・ガソリン、LPGなど一貫して「人々の生活必需品の供給」を業としてきた。向き合う市場は山梨県内。吉字屋の家訓の中の「生活必需品を扱え」、「儲けるな」、「大きくなるな」といった精神が代々会社のポリシーとして受け継がれている。
 そして、古いだけではなく新しい時代のニーズを取り込む。全国にさきがけて太陽光発電で動かすガソリンスタンドの建設や「トータルカーライフビジネス」を目指した経営戦略の展開を積極的におこなっている。現在、SHELLガソリンスタンド直営店11、販売店32、LPGの販売、塩の製造販売など事業内容は手広い。
 吉字屋本店には、「最古にして最新たれ」の教えが引き継がれている。暮らしに必要なものは、一般に利幅は小さいが、需要が安定している。但し、「必需」の中身は時代と共に変わる。この変化に対応することで、必需品販売は、地域の人々の生活を支え、代々受け継ぐ『利より信をとれ』の精神を体現している。吉字屋本店が、440年続いた理由のひとつだ。

 長寿企業の経営は、瞬間的、一時的な利益ではなく、持続的、継続的な収益基盤を持つ経営。長く続くことで、顧客へ長期的な価値が提供できる。雇用が確保できる。社員の生活が維持できる。ビジネスパートナーとの関係が続けられる。地域への貢献が長く続けられる。顧客から必要とされるから、事業が続く。長く続くことが信用。信用を築くのは短期間ではない。
 そうだとすると、企業評価として「長く存続できる」ということも、大変重要な条件のひとつではないかと思う。

参考文献:「200年企業」日本経済新聞社編
       日経ビジネス人文庫 2010.1.5.

株式会社吉字屋本店ホームページ
http://www.kichijiya.co.jp/