かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん地域版71号 2021年3月

最近よく聞く「創業支援」とは?
   第2回 期待される創業者と多様な創業支援
 唐突ですが、“優れた創業者”とはどんな創業者でしょうか。会社を大きくして多額の利益を上げ、広い知名度を得た創業者が優れている、とすると何か違和感が生じてしまいます。確かにそのような会社を作り上げることは並大抵の努力では成し遂げられません。時には運を得てチャンスをつかみ取ることも重要です。そもそも創業者に“優劣”を付けることに意味はなく、「人一倍の努力を繰り返し、ここぞという機会に一手を打つ準備を怠らなかった、そして多くの協力者や理解者にも支えられている創業者は “惹き付ける力”を持っている」と表現するとしっくりきます。そして、そのような魅力ある創業者を地域から生み出したい、という思いが様々な創業支援の根底にあるはずです。

◇基本を身に付ける◇

 とは言え、夢や熱意だけで事業が思うように運ぶものではありません。生み出した商品やサービスが顧客にとっても必要なもの、欲しいものでなければならず、さらには提供する商品・サービスを購入してもらって、初めて対価を得る、その繰り返しによって事業は継続します。

 これらの活動は多くの会社が行っていることで、共通する“基本”が多くあります。例えば、販売するための商品・サービスを形にして顧客が購入できる場所(実店舗やインターネット上、または客先)を確保しなければなりません。また、商品・サービスの存在や魅力といった情報の伝達、購入してもらうための価格の実現も必須です。さらには、どのように資金を集めてどのように運用するかも重要で、何からどのように手を付けていけば良いのかわからない、そのような状況にある創業者に対して、我が相模原市では相模原市産業振興財団や相模原商工会議所、金融機関などが多様な支援メニューを取り揃えています。具体的には、
①創業者や創業検討者に専門家が個別に相談を受ける“創業相談会・窓口”
②創業に向けて必要な知識やスキルを体系的に身に付ける“創業セミナー”
③先輩創業者の実体験を聞くイベント
④女性創業者に向けたセミナーや交流会
⑤創業者向けの融資制度の案内
などで創業者への支援を実施しています。創業者自身の自己分析も行なったり、SNSの効果的な活用方法なども取り入れるなど、年々実践的で充実した内容になっています。

◇スピードが求められるスタートアップへの支援◇

 最近では“スタートアップ“という言葉を耳にしますが、ここでは「まだ世の中にはない技術やビジネスモデルによる創業者」とします。スタートアップによる事業は既存の業種・業態での新規創業に比べて一気に大きな事業に成長する可能性を有する一方、より早く人・モノ・金・情報といった経営資源を集めなければならず、それでも事業が頓挫してしまうリスクが高いのです。このスタートアップに対して国や大手企業、官民を問わない支援機関等が”アクセラレーション“といった支援を行うことが増えてきました。スタートアップはファイナンスや技術開発、マーケティング、組織編制などの専門家からより厳しい目で事業計画が評価され、支援にあたるメンバーは自身のビジネスに向き合うような目線でスタートアップを鍛え上げます。世の中をより豊かにし、社会的課題を解決するような頼もしい企業を地域で創出するため、神奈川県も独自のアクセラレーションプログラムを整備しています。また、神奈川県はシニアによる創業や大学生向けの起業家教育・輩出を目指したプログラムなども実施しています。

 創業支援にはここでは紹介できなかった制度やメニューもありますので、気になることやわからないことがあればSICや支援機関などにお問合せ下さい。次回は創業支援の現場について取り上げます。

片山 寛之(かたやま ひろし)
事業創造部 インキュベーション・マネージャー
2009年にSICに入社。主に入居企業支援を担当し、マーケティング計画や資金計画など、事業全般に関する相談対応や伴走支援に取り組んでいる。2017年、JBIA(日本ビジネスインキュベーション協会)のシニアIM に登録。中小企業診断士(2008年登録)。
片山インキュベーションマネージャー