かわらばん

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     専門家コラム
かわらばん地域版3号 2009年5月

企業をサポートし隊No.3 中小企業のカイゼン支援活動
   第1 回:カイゼンの話を始める前に 株式会社カイゼン・マイスター 代表取締役社長 中小企業診断士・法政大学大学院客員教授 小森 治
○心を失った経営
 現在、世界中が、米国発のサブプライムローンによる同時不況に見舞われて、アメリカ式の強欲資本主義が糾弾されている。リストラの名目で多くの従業員を削減し、自分だけは何百億円もの給与を貰って平然としている米国大企業のCEO達を見ていると、そもそもアメリカ式の経営には、「一番大事なもの」が欠けていたのではないか。
 米国発の経営学もMBA教育の中で「方法論」だけが重視されて、「心」が置き去りにされてきたのではないか。
 日本には昔から「石門心学」のように商人道を説いた学問もあったし、仏教の「足るを知る」精神で強欲を抑える諭しもあった。ヨーロッパでも「ノーブレスオブリージ」という言葉の通り「上に立
つ者は自らを厳しく律する」という習慣があった。
 この不況をきっかけにして失った大事なものを取り戻す機会にすべき時ではないか。
 最近では、発売されて既に十八万部を突破した「日本で一番大事にしたい会社」(坂本光司著)の中に実に良い事例が紹介されている。
 坂本先生は、法政大学で長年中小企業の研究をされてこられたその道の第一人者である。今まで6000社の中小企業を見てきて長期間に亘って成功している会社の共通点をあげているが、その第1が「従業員と家族を大事にする」点である。顧客満足を言う前に「従業員満足」を図れということは説得力がある。
 会社に不平不満のある従業員が、どうしてお客に心からのサービスが提供できようか?
 カイゼン活動でも同じことである。従業員が安心して働き、自分達の仕事に誇りを持っている会社は、従業員一人一人が改善に取り組む熱気が伝わってくる。

○21世紀における中小企業基本法の改正の狙い
 中小企業政策の憲法ともいうべき中小企業基本法が、20世紀末の1999年12月に改正された。その改正の狙いは、一言で言うと従来の「中小企業は、弱者であるから救済しなければならない」という考え方から、「頑張る中小企業を支援する」という考え方への変化である。新中小企業基本法では「独立した中小企業の多様で活力ある成長発展」を基本理念(第3条)として、21世紀における中小企業を、「わが国経済のダイナミズムの源泉」として位置付けている。
 なぜならば、我が国における中小企業は、企業数ベースで99.7%を占め、従業者数でも70%を占めているという重要な位置付けにあり、中小企業が活性化しないと日本全体の元気が出ないということである。

○カイゼンで活性化を
 弊社は第1線を退いたシニアが経験を生かして、企業のカイゼンのお手伝いをしながら、活性化のお役に立てれることを生きがいにしようという趣旨で設立した会社である。
 次号は、具体的なカイゼン活動を進める上で大事なことに触れていきたい。