かわらばん

かわらばん

     地域企業紹介
かわらばん地域版46号 2016年11月

株式会社KYOEI
   自動車産業の発展を支える 不可欠なプレーヤー
 自動車プレス部品用検査治具を製造する株式会社KYOEIの高崎将二代表取締役社長を神奈川県綾瀬市にある本社工場に訪ねました。

 自動車のドアやボンネットなど金属でできている自動車部品のほとんどはプレス加工で作られている。KYOEIが製造する検査治具はそうした部品が設計どおりに仕上がっているかを検査するために使われる立体的な物差しのようなもの。重ね合わせるようにして、寸法や穴の位置などが正しいかを確認する。素材は特殊な樹脂や金属。自動車部品メーカーから部品の設計データを入手し、そのデータを加工して検査治具を製作し、自動車部品メーカーに納入する。自動車部品メーカーはその治具を使って製造された部品が設計図どおりに仕上がっているかを検査する。こうした手順で検査治具は使われる。誤差0.1㎜以内の正確さを求められる部品メーカーにとって精度の高い検査治具は無くてはならないもの。地味であまり知られていないが、我が国自動車産業の発展を支えてきた不可欠なプレーヤーの一員なのだ。

 検査治具を製作している専業メーカーは全国でも30〜40社あるが同社はドア、ルーフ、ボンネットなどの大型部品に使われる検査治具を得意としている。短納期にも対応できる体制が整っていることもあって50社を超える自動車部品メーカーと取引がある。そして、同社の検査治具の70%以上が日本企業の海外工場で使われている。

 同社の前身は高崎さんの祖父が川崎市で始めた木型製造の会社。その後、父親が後を継ぎ、金型製造などのいろいろな仕事を手掛けるようになり、1970年には綾瀬市に移転している。高崎さんは先代社長の次男として生まれたが家業があまり好きになれず、学校卒業後は実家を出て都内で飲食業に就く。将来は自分の店を待ちたいと思っていたそうだが23歳の時、父親に呼び戻され、KYOEIに入社する。入社直後は製造の現場に、4年目から営業に回り、その2年後には主要な取引先だった大手自動車部品メーカーに1年間出向している。

 KYOEIしか知らなかった高崎さんにとって大手自動車部品メーカーの生産技術部での経験はとても貴重で、いろいろな人に出会ったことでネットワークもできたし、自社の仕事を見つめ直すこともできた。その頃のKYOEIは自動車部品の試作、少量生産、検査治具を製造する従業員10名の小さな下請け工場。生き残るためのKYOEIにしかできない仕事は何か、KYOEIに望まれている役割は何かということに気づかされたという。

 会社に戻った高崎さんは今ある設備と人材を活かし、少しずつ検査治具専業メーカーへと舵を切っていく。そんな中、父親が61歳の若さで突然亡くなり社長に就任する。工場の移転拡張の時期とも重なり、土地の取得、新工場建設、銀行との交渉、そして総務、財務といった経営全般を担うことになる。「とにかく遮二無二に突っ走りながら、短期間で経営の勉強をさせてもらいました」と当時を振り返る。

 今、高崎社長が力を入れていることは二つ。一つは同じ悩みを持つ同業者が集まり「検具.net」という企業間ネットワークを作ったこと。関東、東海、中国、九州地方から13社が、韓国・中国から7社の企業が集まった。活動を始めて5年、情報共有や技能向上のために韓国、中国でも研修会を開いた。そして、海外や地方に移転した自動車部品メーカーの工場が検査治具をスピーディーに調達できるように「検具.net」の会員企業が相互補完する共同受注のような取り組みを始めている。同時に海外や地方での検査治具メーカーの立ち上げ支援も行っている。二つ目は3Dプリンターを使った治具の製造だ。自動車メーカーは世界的な競争に常にさらされている。部品メーカーも同様だ。日本の企業が作る検査治具の精度やコストパフォーマンスの高さが再評価されてはいるが、コストダウンの要求は続く。高崎さんも今の製造方法でその要求に応えることには限界があると感じ始めている。検査治具の製造に革命をもたらす高崎さんの挑戦が始まろうとしている。

株式会社KYOEI
代表取締役 高崎 将二(たかさき しょうじ)
所在地 :神奈川県綾瀬市吉岡東4-2-11
従業員数:30名 売上高:3.8億円
事業内容:自動車等金属プレス部品・樹脂成形部品用検査治具・組立、矯正治具設計~製作、治具改修・メンテナンス・修理業務、金属部品加工全般(旋盤、フライス、レーザー加工等)
高崎社長