SIC職場リーダー養成塾

SIC職場リーダー養成塾

平成25年度 結果報告

 平成19年度から始まった「SIC職場リーダー養成塾」も7年目を迎え、今年は12名の塾生が受講しました。
 職場リーダーの役割とは、「部下の特性を知り、潜在的に持つ力を見出し」、「それを最大限に伸ばし、大きな戦力に育て」、「力を結集し、組織で成果を出す」ことであると考えます。塾生は、様々なリーダーとの他流試合を通じて、「教わるのではなく自ら主体的に学ぶ」、「他人から学ぶ、自分自身からも学ぶ」という心構えを養い、コミュニケーション力や課題解決力を高めて、職場リーダーとしての役割を果たすことに努めました。

◆第1回 オリエンテーション(合宿研修1日目)

  • 懇親会

  • 自己・自社紹介

 オリエンテーションでは本リーダー塾のねらい、進め方の説明、自己・自社紹介、を行いました。自己・自社紹介では、発表するだけでなく積極的に質問を行い、塾生同士の理解を深めました。
 また、研修を効果的に進めるためには、塾生同士が打ち解け合い、「仲間」になることが重要であるため、コミュニケーション形成のための懇親会を開催しました。


◆第2回 「職場のコミュニケーション①」(合宿研修2日目)

  • 質問会議

  • 傾聴

 リーダーとしてよりよい職場環境を築くにはコミュニケーションスキルが必要であり、コミュニケーションを円滑にするためのコーチングを学びました。
 「傾聴」では、話し手、聞き手、その様子を観察する人で3人1組となり、聴き手はうなずきながら熱心に話し手の話を聴いていました。また、「質問会議」では6人1組になり、話し手の話を引き出すために5人の聴き手が積極的に質問をしていました。


◆第3回 「目指す職場リーダー像を明確にする」

  • 目指すリーダー像の発表

  • リーダーの役割やスキルの共通点・相違点抽出

 上司や部下が職場リーダーに期待していることをベースに、職場リーダーの役割や必要な基本スキル(技能、知識、行動様式など)を把握し、自身が目指すリーダー像を明確にしました。
 グループディスカッションでは、リーダー像や基本スキルをポストイットに書き出し、それを共通点と相違点に分けて整理し、その理由について意見を出し合いました。


◆第4回 「職場の問題を抽出する」

  • 連関図を使用した発表

  • 問題・原因・影響の関連を見える化

 自社、職場、自身が抱える複数の問題について、その影響や原因の関連を「見える化」する方法を学びました。
 取り上げた問題に対して「なぜ?」「なぜ?」を繰り返し、その原因や影響をポストイットに記入し、線で結んでいくことで連関図を作成しました。「本当にそれが原因なのか?」「他にも原因があるのでは?」などと互いに質問しながら取り組んでいました。


◆第5回 「職場の課題解決①(課題設定、目標設定)」

  • 設定課題の発表

  • 講師から課題設定のポイント説明

 課題解決に取り組むに当たり、課題や目標をどのように設定するのかが一番重要であるため、講師から適切な設定方法や留意点を学びました。
 グループディスカッションを通して意見を出し合い、塾生同士で違った視点でのモノの見方や考え方など新たな「気づき」を得ながら、取り組むべき課題や目標を明確にし、最後に個人発表を行いました。


◆第6回 「職場の課題解決②(原因推定、対策検討、実行計画)」

  • 対策案・実行計画の発表

  • 対策案の検討、絞り込み

 設定した解決目標の実現に向け、最も重要な原因を推定し、具体的な対策案の検討と選択を行い、実行計画を立てました。
 対策案の検討では、「最も効果的な対策案は?」「何人の同僚や部下を巻き込んで実行できるのか?」などと費用対効果や実行計画への落とし込みを考えながら、優先順位が高い対策案に絞り込んでいきました。
 この後、約2ケ月間にわたり、実行計画に基づいて対策案を各社で実践しました。


◆第7回 「職場のコミュニケーション②」

  • 承認

  • アイスブレーキング

 より一層コミュニケーションスキルを高めるために、メンバーのやる気を引き出すモチベート技法を学びました。
 始まってすぐに、アイスブレーキングにて話し合いやすい雰囲気を作る準備運動を行いました。その後の「承認」では、3人1組となってお互いに相手を褒めたり認めたりすることに取り組み、コミュニケーションについての理解を深めました。


◆第8回 成果発表会

  • 修了証授与

  • 成果発表

 これまでの集大成として、塾生、講師、上司、経営者等が見守る中、約2か月間にわたり各社で取り組んだ課題解決の実践結果と今後の行動計画を発表しました。
 発表に対して、発表者の上司や経営者ではない他の塾生の上司や経営者からも質問が飛び交い、非常に有意義な質疑応答になりました。
 全塾生が無事成果発表を終え、塾長より修了証が授与されました。


アンケート結果

 本リーダー塾では、塾生12名に対して、「研修満足度アンケート」と「自己分析アンケート」を実施しました。
 まず、第8回の研修後に実施しました「研修満足度アンケート」の結果ですが、例年どおり、本リーダー塾を受講した満足度は「非常に高かった」との回答をいただきました。
 その理由として、特に「グループディスカッション」や「講義や課題の内容、レベル」、「スタッフの対応」や「講師の教え方」に対して、満足度が高かったことがわかりました。

【アンケートコメント抜粋】

グループディスカッション
 ・他業種の方々の考えを聞くことができて、参考になった
 ・初めてでしたが、楽しかった
講義の内容、レベル
 ・講習終了後に必ず内容説明があり、わかりやすかった
 ・初めはレベルが高く感じたが、受講する中で対応することができた
設定課題の内容、レベル
 ・自ら課題設定ができたので、現在困っていることに取り組めた
 ・研修中に課題を自社で実践する事が非常によかった
スタッフの対応
 ・トラブルにも柔軟に対応してもらい、最後まで参加することができた
 ・すぐにメールの返信をもらえてよかった
講師の教え方
 ・丁寧で分かりやすかった
 ・的確なコメントやアドバイスがあった

 つぎに、第1回の研修後(1回目)と第8回の成果発表会後(2回目)に実施しました、「自己診断アンケート」結果を比較すると、職場リーダーとして求められるスキルの自己評価がすべての項目で高くなっていました。1回目の自己評価では、「社内外の若手リーダーとの交流を行っている」「部下の能力を最大限に引き出す力がある」「部下を大きな戦力に育てる力がある」が平均を大きく下回っていました。
 しかしながら、2回目の自己評価では、それらのスキルへの自己評価が大きく向上しており、さらに、「コミュニケーション力がある」も同様に高まっていました。
研修に参加したことで、職場リーダーとして求められるスキルが向上したことを、塾生自身で実感していることがわかりました。

参加者の声

D社:E・Yさん
 新しい工作機械の導入が決まり、汎用旋盤で高度な加工を行っていた社員を担当にすることが決まった。しかし、その中にまだ旋盤加工作業内容によってはすべてを任せることができない入社3年目の若手社員がおり、旋盤教育が急務となった。
 リーダー塾のグループディスカッションで、異業種企業の職場リーダーからもらったアドバイスやコメントを生かし、作業時間に重点を置いた教育計画をつくり上げて実行した。
 若手社員は、決められた作業時間内で新しい技術を習得することができるようになり、さらに、時間管理への意識や達成感による挑戦する意識も高まった。現在では、旋盤加工品だけでなく、単納期対応品もためらうことなく任せることができるようになった。

P社:I・Yさん
 設計者ごとに3DCADの操作設定が異なることで、他設計者のPCで修正業務を行うと思い通りに操作ができず、普段よりも時間をかけて設計修正を行うことがあった。
 リーダー塾では、表や図を使ってコミュニケーションを取りながら、重要な問題点や原因を絞り込むための問題解決の手法を学んだ。また、様々な業種の塾生とディスカッションを行う中で、モノの幅広い捉え方や考え方も習得した。
 その手法や考え方をもとに、抽出した問題点を連関図にまとめると、1つの問題点を解決する事で、効率よく複数の問題点が解決できることがわかった。
 その結果、操作設定が統一して基準を見直したことで他業務の工数削減に繋がり、より一層設計の問題や見直しに時間を費やせるようになった。

K社:S・Nさん
 最近、「心の病」で休暇を取る社員が見受けられるようになったが、悩み事を気軽に相談できるような体制が社内に整っていなかった。
 リーダー塾では、職場の問題抽出から課題設定・目標設定・原因推定・対策検討・実行計画まで、課題解決の進め方を学んだ。その方法に沿って、実践期間では「心の病」の原因を調査するために、対応策として出退勤時のストレスチェックとヒアリングを行った。
 結果、高精度の加工が求められる仕事の難しさや納期遅れしている製品対応の多さなどから発生する加工ミスやオーバーワークが、ストレスの原因であることを明らかにし、それを社内で周知することで、悩みを相談しやすい体制へと変えるきっかけづくりができた。

K社:A・Mさん
 他の従業員に対して攻撃的で作業態度が悪く、担当業務に対しても積極的に取り組むことができない部下がいた。そのような態度から、仕事や同僚に対して何か不満や困っていることがあるのかと話を聞くにも、どのように話を切り出してよいか悩んでいた。
 そこで、コーチングで学んだ傾聴や質問、承認を意識して、コミュニケーションをとってみた。すると、徐々にではあるが彼が話してくれるようになったため、その想いや考えを熱心に聴き、できるだけ彼の良いところを見つけ、褒めてあげるようにした。
 その結果、いつでも話し合いができるようになり、また、攻撃的な性格が和らぎ、担当業務に対しても積極的に取り組むようになった。

O社:R・Gさん
 レンタル商品の在庫管理が徹底されていないことで、何度も探すムダな時間が発生したり、商品の使用頻度が偏ったりしていた。また、発注から入荷の流れが統一できていないため、検収に時間がかかっていた。
 研修での課題解決への取り組みやディスカッションを通じて、定位置・定品や先入先出方法など、在庫管理のポイントを学んだ。実践期間では、商品スペースをつくり、定位置を決め、表示をつけた。発注から入荷まで正確に把握する専用ファイルを作成した。
 次第に、定位置と表示の徹底により決められた場所に商品が戻されるようになった。さらに、メンバーを巻き込んで課題解決に取り組んだことで、チーム内で在庫管理方法や納品方法などへの問題意識が高まった。

S社:Y・Tさん
 部下に新しい切削加工作業を教えていたが、よくネガティブな発言をしていて作業を覚えようという姿勢が見られず、指示や指導をしっかり聞かないことでなかなか作業スキルが身に付いていかなかった。
 リーダー塾で学習した傾聴や開かれた質問を使用して、1日1回は作業中に声をかけた。担当業務への取り組みや行動に対しても、褒めて認める事を心がけてコミュニケーションを取るようにした。
 すると、以前よりも私の話を聞き、ネガティブな発言も次第に少なくなった。また、ポジティブに新しい切削加工作業に取り組もうと挑戦する姿を見ることができるようになり、作業内容も着々と覚えていった。

H社:Y・Mさん
 洗浄作業で使用している有機溶剤(洗浄液)の使用量が多く、購入コストや廃液処分コストが高いため、洗浄の品質を下げずに有機溶剤をコストダウンしなくてはならなかった。
 洗浄作業員にコーチングで教わった「傾聴」を実践して改善点を聞き出し、実際に作業してどのような場面で作業者が困っているかを確認し、2つの改善項目を決定した。1つは、無理に有機溶剤の使用量を減らすのではなく、無駄に揮発している有機ガスを抑えることによる改善であった。もう1つの改善は、洗浄部品をグループ分けし洗浄の順番を明確化した。
 結果、シンプルな治具を直すだけでも驚くべき効果がみられ、購入コストが35%の削減、廃液処分コストは50%の削減になった。

K社:H・Kさん
 私は、常日頃部下に対して注意するときに、相手の話や言い分を聞かないで、一方的に注意をしていた。また、部下に対して感謝の気持ちを表すこともなかった。
 今回の研修の中で、部下に注意するのが唐突すぎると指摘を受けた。翌日から、「本当に部下の判断や行動は間違っているのか」と考えてから注意をするように心がけた。また、会社のためにやり遂げてくれた些細な事でも、見逃さずに感謝の気持ちを表すように努力した。
 すると、私の思い込みによる勘違いで注意をすることが少なくなっていった。また、部下から「課長(私)がリーダー塾に受講するようになってから、とても良い方向に変わってくれたと思います」と喜ばれるようにもなった。