かわらばん

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     社長のコラム
かわらばん入居版105号 2013年2月

中嶋社長のつぶやき
   「MAKERS」・製造業が根底から変わり始めた!
 日経平均株価が、昨年末に1万円を超えました。いろいろな見方、捉え方があると思いますが、「円安」「株高」などの現象が、マーケットで起こっています。とても長く続いていた「円高」「株安」「デフレ」などが転換点を迎えているのでしょうか? 皆さんは、どのようにお考えでしょうか?

 そのような状況変化の中で、ビジネスを変える、ビジネスが変わっていく一つの考え方として、『メイカーズムーブメント』が注目を集めているようです。クリス・アンダーソンの著書「MAKERS」が、問題提起をしています。
 年明け早々の週刊東洋経済・2013/1/12号では、「メイカーズ革命」の特集が組まれました。サブタイトルは、「誰でも、ものづくりスターになれる!!」でした。その他にも、新聞や雑誌の書評、勉強会・読書会のテーマとしても、取り上げられることが多くなっているようです。

 それでは、ここでいう「メイカーズムーブメント」とは、どんなことなのでしょうか?
「電気製品や自動車など複雑なものづくりにおける『設計→試作→資金調達→評価・検証→量産→販売』というプロセスは、これまで大企業が独占していた。しかし、今では小さなチーム、または個人でも乗り出せるようになった。」
「歴史を振り返ると、17~18世紀に英国で産業革命が起こる前の社会では、ものづくりは人々の生活そのもので、個人が衣服など身の回りの多くの必需品をつくっていた。その後の産業革命の結果、製造と消費が分断。多くの人々が生産者であることをやめ、大量生産で生み出された製品を一方通行で利用する消費者になった。しかし、3Dプリンタやインターネットなどの力を借りれば、再び人々にものづくり力を取り戻すことができる。20世紀型の一方通行を脱し、ものづくりに主体的にかかわっていこう、というのがメイカームーブメントである。」(週刊東洋経済2013/1/12号P54 長沼博之氏)としています。

 かなり大胆に要約すると新しい「メイカームーブメント」の特徴は、3つ。
1.3Dプリンタやレーザーカッターのようなデジタル工作機 械がデスクトップに置かれるようになり、専門知識を持 たない人たちでもモノをデザインできるようになった。
2.デザインされたアイデアをオンラインのコミュニティで公 開しながら、オープンイノベーションによって世界中の 仲間と共創できるようになった。(クラウドファンディン グを利用すれば製造資金ですらオンライン上で集めるこ とも可能)。
3.世界中にある製造ソーシング会社をネット経由で利用すれ ば、そこで生まれたアイデアをクリック一つで低価格・ 小ロット生産することができるようになった。

 この3つの条件がそろったことで、これまで「大きな工場」と「設計・開発の専門技術を持つ人材」、そして「流通インフラ」を持った大企業の特権だった製造業が、個人の手に渡ったということになる訳です。

 「3Dプリンタやレーザーカッターによるデジタルなものづくり。そして、世界中を結び付けるインターネットエコノミーの発展・・・。こうした波がぶつかり合ったところに、新しい「メイカーズ(製造者)」が次々に生まれている。」(週刊東洋経済 2013.1.12.)

 日本でも、具体的に新しいビジネスを生み出している。「3Dスキャナーと3Dプリンタで、精巧なフィギュアをつくる期間限定のショップ」「下請け企業が、3Dプリンタを導入し、デジタルファブリケーション事業に進出」など実績が作られてきています。そして、ここで「重要なのは人々の価値観が変化してきたこと」「それは、『消費社会』から『生産社会』への移行とでもいうべきもの」で、「インターネット上では、すでに多くの人が『メイカー』になっている」現実があることを認識する必要があります。

 こうして見ると「メイカームーブメント」は、すでにビジネスの中で動いています。「3Dスキャナー」「3Dプリンタ」「CNC装置」「レーザーカッター」の『4種の神器』とインターネットを利用したネットワークで、ビジネスの可能性が拡大している事実がある訳です。しかし、これは起業家やベンチャーだけのものではなく、すべてのビジネスで応用できる可能性があります。日本企業にとって、新しいビジネスモデルとして、考えてみても良いかも知れません。

・「MAKERS」21世紀の産業革命が始まる 
 クリス・アンダーソン・著 関美和・訳 NHK出版 012/10
・週刊東洋経済 2013.1.12. 「メイカーズ革命」