かわらばん

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かわらばん入居版94号 2012年2月

中嶋社長のつぶやき
   主流市場の秩序を乱す「破壊的イノベーション」
 ビジネスの在り方が急速に変わりつつある。外部環境の変化、私たちの価値観が変わるに従い、旧来のビジネスが通用しなくなっている。競争相手が、どこからか突然、あるいは静かに悟られないようにやってくる。旧来のビジネスに代わって新しいビジネスモデルが世の中に登場している。この先ビジネスを創造したいなら、イノベーションが、不可欠である。
 イノベーションを考えるとき、押さえておきたいことが幾つかある。
 クレイトン・クリステンセンは、「イノベーションのジレンマ」で、このように述べている。イノベーションには、持続的イノベーションと破壊的イノベーション、大きく2つの種類がある。「従来は何か新しいものを創造することがイノベーションと考えられていたのに対し、新しいものの創造には異なるプロセスがあることを明らかにした。」
 持続的イノベーションとは、「性能の向上を伴い、常に上位市場を満足させる技術開発」「一般的にある技術が市場で生き残っていくには、右肩上がりの軌跡を描く性能向上を図らなければならない。」「そして、常に性能の向上を伴う技術は、より高機能を求める上位市場のニーズを満足」させる。「我々が一般的に見る製品の高度化は、この持続的イノベーションの結果」である。
 一方、破壊的イノベーションは、「必ずしも性能の向上を伴わず、しかも価格が安くなる技術が主体」になる。よって「高機能をもとめる上位市場を満足させないイノベーション」「破壊的技術は、既存市場の主流ではなく、低機能で価格の安い技術を求める市場」に受け入れられる。「また、新たなニーズが生じた際に、それを解消する手段がない場合、性能が低くても価格が合理的な技術ならば、市場に受け入れられる余地がある」「破壊的技術が、いったんこのような市場に根付くと、技術開発が急速に進む。そして場合によっては、やがて主流市場でも通用する性能向上が図られ、しかも低価格であることから、破壊的技術が主流市場を侵食」する。
 更に、クリステンセンは、破壊的イノベーションをローエンド型破壊と新市場型破壊の2つに分類した。ローエンド型破壊は、主流市場の下位市場に破壊的技術が根付いて始まるイノベーション。新市場型破壊は、主流市場とは異なる価値基準の新市場に根付いて始まるイノベーションである。新市場型は、既存市場から見ると、従来とは異なる価値基準の上に成立するが、この価値基準を満たす技術は存在しない。そのため、ここに導入される技術が性能的に未熟だとしても、価格が合理的なら解決策はほかにないため、利用者はそれに飛びつく。そして、性能が未熟な技術がいったん市場に根付くと、急激な技術開発が始まる。こうして、性能が高まり、やがて主流市場から利用者を取り込むパワーを持つ。このようなプロセスを経るのが、新市場型の破壊的イノベーションである。

 イノベーションに関して概略をご理解いただけましたでしょうか
 現在の激変している外部環境と内部環境を理解し、経営戦略を決定するために、破壊的イノベーションの分類の中で、自社のビジネスモデルや製品サービスを考えてみるのも良いかもしれません。


参考文献
「イノベーションのジレンマ」クレイトン・クリステンセン著 翔泳社 2001
「イノベーションの解」クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著 翔泳社 2003
「破壊的クレイトン・クリステンセンのイノベーションがわかる本」 中野明著 秀和システム 2008