かわらばん

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かわらばん入居版90号 2011年10月

中嶋社長のつぶやき
   「計画的戦略」「創発的戦略」
 今年の「SIC経営塾」はお蔭様で第10期を迎えることができた。講師は浜銀総研の寺本明輝氏。受講者12名。多様な業種から個性的なメンバーが集まった。自社がどうしたら成長できるのだろうかとの問題意識を持った「志」の高いメンバーである。講義は「自社の現状分析」→「経営理念と存在意義の確認」→「事業領域の定義」へと進んでいる。そして10月第6回のテーマは「戦略シナリオを考える」であった。2月に予定されている「事業構想」発表に向けて、構想具体化を考える時期である。その講義で「計画」と「創発」の話があった。確認しておきたいポイントの1つであり紹介したい。

 「経営者は、新たな環境状況を認知して自社を『このような会社にしたい』というビジョン(戦略意図)を描き、これを実現するためにドメインを規定し、戦略計画まで具体化していく。もし環境が安定的であり、当初認知していた状況と大きく変わらないのであるならば、経営者の構想はある期間のなかで実現に向けて近づくことになる。このようなプロセスは、『意図した戦略』から『計画された戦略』を経て『実現された戦略』に至る経営戦略の計画的側面を表している。」
 「しかし、環境が変動的で、予想もしなかったような状況が生じるならば、経営者が当初考えていた戦略的意図は実現することが困難になり、戦略構想の変更を余儀なくされる。つまり、戦略構想のいくつかは実現されることなく放棄される。」「逆に、環境の予期しない変化によって当初予想もしなかった事業機会が認識されるかもしれない。環境の予想もしなかったような変化は、当初の戦略意図の実現にとっては危機であるが、企業を飛躍的に発展させる機会を提供する可能性がある。」「企業がこのような環境の好機をとらえ、発展の契機にすることができるか否かは、社外から創発的に戦略行動が生まれてくるかどうかにかかっている。」「戦略形成のプロセスには計画的側面と創発的側面があり、どのような側面が強く現れるかは環境の状況と企業の組織的特性によって異なる。」
 「経営戦略の決定が、将来に関して不確実性が支配する『部分的無知』のもとでの決定である以上、戦略をあまり詳細に計画化することは、経営の柔軟性を失わせ、特に環境の変化が激しいときには大きな危険がある。」「逆に、経営戦略をあまり曖昧にしすぎると、意思決定の指針としての効果に問題が生じる。」
 「経営戦略にどの程度の具体性(計画性)と柔軟性(創造性)を持たせるかは、環境の状況によって異なる。」「経営戦略が『計画された』と『好機に乗じる』のどちらも極端に走ると、長期的には良い結果を生まない。企業は、両方の戦略を必要としており、効果的な戦略の答えはそのダイナミックな融合のなかにある。」
 このように、「経営計画」は必要だ。計画がなければ、「成り行き」である。短期的な勝者になることはあっても、長期的に継続できない。一方「チャンス」は突然現れる。計画は出来ない。「ビジネス・チャンス」を計画に無いからと無視するのは勿体ない。この「チャンス」を「チャンスと捉える能力」も必要だ。「チャンス」を掴みに行き、考えて、考えて、考えると、その中から「創発」が生まれ「チャンス」をゲットできる。良く考え、実践する。実践しながら、考える。このバランスが、経営者やリーダーに求められているようだ。特に経済環境変化の激しい時代には。

《参考文献》
〇「経営戦略」(新版)論理性・創造性・社会性の追求 2006.7. 有斐閣アルマ 
大滝精一・金井一頼・山田英夫・岩田智[著]
〇「変わる会社が生き残る!!」2011.7. 相模経済新聞社 寺本明輝著