かわらばん

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     SICの歴史
かわらばん入居版94号 2012年2月

証言で綴るSICの歴史
   有限会社創夢設計 取締役 長崎 克央 ― 第1回(2回連続でご紹介します) ―
 SIC-1~3の建物を設計・監理させていただいた立場より、この施設の誕生の頃のエピソードなどをご紹介させていただきます。

■プロポーザルに際して考えたこと<新たな次元へ>
 20世紀最後の年の3月に、SIC-1の設計者選定プロポーザルに応募する機会を得ました。事の始まりは十数枚のFAXによる資料の配布で、その約1ヶ月後にA2版2枚の提案書を提出することとなりました。資料の計画説明書には、施設の基本コンセプトとして「ローコスト」「多様なバリエーション」「デザイン性」「交流・親しみやすさ」「スケルトン方式」がシンプルな説明と共に謳われており、その理解と穿鑿が第一段階です。
 それらを読んでいて強く感じたことは、一般的な「公共施設」とは異なる事と、「何かの模倣」ではない『新たな施設づくり』を求めているという発注者の意識の高さと新しさでした。それに呼応するべく、新たな次元へ挑戦する意気込みで、プロポーザルに臨みました。
 検討期間中の前半に、可能な範囲でBI施設を見て回った所、参考としてよりむしろ反面教師として気になる事が多く、『SICは別の道を歩むのだ!』という認識が次第に高まっていった事を覚えています。

 
■プロポーザル:提案書の内容<創造・共有>
要綱では、提言書の様式がほぼ定まっており、各ページに以下の課題への提案が求められていました。

1P-aトータルコストの縮減化の方策
-bスモールオフィスのフレキシビリティー
-c周辺と調和した施設デザイン
-d交流と親しみやすさに配慮
2Pエスキス図:配置図・平面図・断面図・透視図

これに単純に沿うだけでは魅力と競争力を表しにくいと考え、以下のQ&Aを出しました。
Q:2Pに説明文および概念図を書き入れても良いか
A:可 

 この回答を受け、提案の骨格が定まりました。即ち、『説明文と概念図で勝負しよう!』です。
 そこで、説明文に<エスキスのコンセプト>として「条件の変化に合わせ、常に(箱も中味も)進化・成長していく柔軟なシステムが必要」と記し、与条件への解釈を述べた上で、以下の<概念図>を提示しました。

 さらに提案の基本理念として「『過保護な孵化器』を目指すのではなく、企業の生死を分ける『戦いの道場』であり、厳しさと優しさを併せ持つ」を据えました。
 このイメージは、与えられた資料や、時代の流れを理解していれば捻り出せる言葉が多いものの、いくつかの「殺し文句」を注意深く潜ませ、図として「可視化」させ、多くの人が直感的にコンセプトを共有し易くさせた所がミソ(のつもり)です。

 もちろん、この大上段に構えたコンセプトに見劣りしない課題への提案とエスキス図をまとめ上げ、4月下旬に提出しました。
 (実は、これに落ちたら会社をたたむ覚悟でした)